第1課 文字と発音
ヒンディー語の文字
ヒンディー語の表記には、デーヴァナーガリー文字が使われます。この文字は、サンス
クリット語、マラーティー語、またネパール語の表記にも用いられます。また、表記と
発音とのずれが少ないことが特徴です。下の表の文字をクリックすると、筆順と発音が
確認できます。
●母音文字
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a
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ā
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i
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ī
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u
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ū
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e
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ai
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o
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au
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●子音文字
| 無声無気 | 無声有気 | 有声無気 | 有声有気 | 鼻音 |
軟口蓋閉鎖音 | | | | | |
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ka
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kha
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ga
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gha
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ṅa
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硬口蓋破擦音 | | | | | |
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ca
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cha
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ja
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jha
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ña
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そり舌閉鎖音 | | | | | |
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ṭa
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ṭha
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ḍa
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ḍha
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ṇa
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歯裏閉鎖音 | | | | | |
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ta
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tha
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da
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dha
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na
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両唇閉鎖音 | | | | | |
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pa
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pha
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ba
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bha
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ma
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●半母音
硬口蓋接近音 |
歯茎ふるえ音 |
歯茎側面音 |
有声唇歯摩擦音 両唇接近音 |
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ya
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ra
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la
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va
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●摩擦音
無声後部歯茎(硬口蓋)摩擦音 | 無声そり舌摩擦音 無声後部歯茎(硬口蓋)摩擦音 | 無声歯茎摩擦音 | 有声声門摩擦音 無声声門摩擦音 |
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śa
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ṣa
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sa
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ha
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●弾音
●外来音
●母音記号
子音字はa以外の母音を従える場合、それぞれの母音は規則的な形をとり、以下のように一種の母音記号として子音字に追加されます。(◌は子音字の字母を表す)
子音文字कに母音記号をつけると、次のようになります。
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ka
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kā
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ki
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kī
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ku
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kū
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k
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ke
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kai
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ko
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kau
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ka
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kã
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kah
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※例外に注意:रの文字にu, ūの母音が加わると、それぞれरुとरूになります。間違いやすいので注意してください。
●結合文字
ヒンディー語では、あいだに母音を介さずに子音同士が結びついて発音される場合(子音連続)に独特の結合文字を形成します。このとき、文字は規則的に変化をしたり、特殊な字形となることがあります。慣れるまでには少し時間がかかるかもしれませんが、練習してみましょう。(以下では、最初の説明であることを考慮して、デーヴァナーガリー文字を使わず、ローマ字表記を用いた部分もあります。文字とローマ字表記音の対応については、前出の文字表をご覧ください。ただ以降こでは、長母音はā、īなどの文字を使わず、母音を二つ連続させて表記しました)
1.どのような文字形を取るかは、その文字の本来の形によってほぼ決まってきます。
① 中央に縦棒を挟んで、左右対称形に近い文字などは、左半分を書いたあとわずかに右半分に書き続けるところで止めます。
例:क (ka)は、कक (kaka)ではなくて、क्क (kka)となります。
②縦棒が右端に来ている文字
ख (kha), ग (ga), च (ca), त (ta), न (na), स (sa), श (sha), य (ya), ल (la), व (va) など多くの文字は、その右端の縦棒を省略する形になります。
例: ख्याल (khyaal), ग्यान (gyaan), च्यु (cyu), त्याग (tyaag), सन्त (sant), श्याम (shyaam), च्य (cya), दिल्ली (dillii), व्यस्त (vyast) など。
③注意が必要な文字はर です。この文字は母音を介さず、直接後続の子音に結び付くときには、その子音の上部に半円形で表記されます。
例:शर्त (shart), अर्थ (arth), धर्म (dharm) など。
また、この文字が、先行する子音字に母音を介さず直結する時にも特殊な字形を取ります。
例:क्रम (kram) राष्ट्र (raa ṣ ṭra)
प्रेम (prem)など
2.母音をまったく従えない、純粋の子音だけを表したいときには、ハル記号と呼ばれる文字の右下に短い斜線を用いて表現することもよくあります。
3.また、やや古い表記法ですが、上下に重ねて子音結合を表現したり、母音を従えない場合の独特の短縮形を使用する文字もあります。
例:उद्भावना (udbhaavanaa), अड्डा (aḍḍaa), टिड्डी (ṭiḍḍii)
これらの規則以外に、特殊な結合文字として次のようなものがあります。
インドの教室をのぞいてみましょう。先生が文字を教えてくれます。
ヒンディー語の発音
ヒンディー語は、基本的には書かれた通りに発音して差し支えありませんが、いくつか注意しなければならないこともあります。とくに、すべての子音文字、半母音文字は短いaの発音を含んだ音節文字ですが、このa音は単語の中に子音字、半母音字が置かれた位置によって、発音されたり、されなかったりします。そのため「潜在母音」と呼ばれることがあります。
最初は難しいと感じるかもしれませんが、練習をするうちにすぐに慣れることでしょう。したがって以下の説明も簡単を旨としました。
●潜在母音の規則
1.語頭のa母音は発音します。
2.単語の最後のa母音は発音されません。
例:kamala→ kamal, camaka→ camak
3.a母音が脱落した直前の子音字に含まれるa母音は発音されます。
例:kamala→kamal(最後のa母音は脱落しますが、その直前のma音節のaは発音されます。)
4.結合子音の直前のa母音と直後のa母音は発音されます。
例:macchara→macchar(まず、最後のa母音は脱落します。しかし、cchの結合子音にしたがうa母音とそれに先行するma音節のa母音は発音されます)
5.それ以外のa母音は発音されません。
例:matalaba→matlab(規則1により語頭のmaのa母音は発音されます。規則2により単語末のbaのa母音は脱落します。規則3によりlaのa母音はされます。規則4はこの単語では該当する子音結合はありません。規則5により、taのa母音は発音されません。)
●発音記号について
1.文字の上部に黒点で表現される記号はアヌスワーラと呼ばれて、鼻子音を表します。
さらに特定の鼻子音の代わりに用いられることがあります。
たとえばヒンディー語はहिन्दी、हिंदी の二通りの書き方がありますが、発音は同じです。
この場合は、アヌスワーラ記号は、दの文字列に属する鼻子音(鼻音)नの母音を従えない形न्の代用として用いられています。
2.文字の上に、三日月(チャンドラ)があってさらにその上に黒い点(ビンドゥ)が乗っている記号がありますが、
これはアヌナーシカと呼ばれる鼻母音化の記号です。
आँख, दाँत などの単語に使われますが、
それぞれ日本語ですと、アーンク、ダーントなどと聞こえますが、「ん」の部分は鼻から息を出します。
3.ヴィサルガと呼ばれる記号 : があります。これは先行する母音に続いて息をだします。दुःख, などですが、ヒンディー語の場合には表記されていても無視されることもあります。
それでは、実際に単語の発音に慣れましょう。名詞の格変化と形容詞の活用も載せましたので、何度も発音して、活用ごと覚えてしまいましょう。
● 単語の読み方
音声に合わせて、短い単語を読む練習をしましょう。文字が覚えられたかも確認しながら発音しましょう。
(1) 綴り通りに発音する単語
(2) अの母音を発音しない単語
(3) 単母音अの後にहが続く単語
(4) ैの後にयが続く単語
(5) ा (काँ)の後にवが続く単語
(6) यで終わる単語
小学生はこうして文字と単語を覚えます。
● 名詞の格変化
名詞の格変化を声に出して覚えましょう。
(1) ाで終わる男性名詞(単数・直格–斜格–呼格–複数・直格–斜格–呼格の順)
(2) (1)以外の男性名詞(以下、単数・直格–斜格–複数・直格–斜格の順)
(3) 例外
(4) ीで終わる女性名詞
(5) ियाで終わる女性名詞
(6)(4)(5)以外の女性名詞
● 形容詞の活用
(1) ाで終わる形容詞は、修飾する名詞の性・数・格に合わせて活用します。名詞の活用と合わせて覚えましょう。(単数・直格–斜格–複数・直格–斜格の順)
(2) 語末がा以外なら活用はしません。
(3) ाで終わる若干の形容詞には、活用しないものがあります。