発音のしかた
発音概説
ウルドゥー語の発音は、日本語を母語とするものにとって決して難しくありません。ただし、日本語では使わない音がいくつかあるので、その音に関しては少し練習が必要となります。ウルドゥー語で用いられる音素一覧は下記の表を参照してください。実際の発音は、各文字をクリックすると、聞くことができます。ここでは、日本語で使われない音のみ、簡単に発音要領を説明します。ここで説明している音以外は、日本語と同じだと考えて差し支えありません。
子音 (consonants)
赤丸数字部分はクリックで説明ウィンドウが開きます。
反舌音(retroflex sounds)
舌先裏側を硬口蓋(上歯のうしろにある硬い部分)につけ、「タ」や「ダ」、「ラ」を発音します。日本語の「タ」や「ダ」などとの違いは、こちらで確認できます。この音に該当するのは、ٹ (ṭ)、ڈ (ḍ)、ڑ (ṛ)の3つおよびその有気音(下記参照)です。
有気音(帯気音とも)(aspirated sounds)
呼気を強く出して発音します。口の前にハンカチを持ってきて、そのハンカチが揺れる程度に強く息を吐きながら発音します。ウルドゥー語には、پھ (ph)、بھ (bh)、تھ (th)、دھ (dh)、ٹھ (ṭh)、ڈھ (ḍh)、ڑھ (ṛh)、چھ (ch)、جھ (jh)、کھ (kh)、گھ (gh)、مھ (mh)、نھ (nh)、لھ (lh)の14種類があります。実際の発音は、こちらで確認できます。
上記のとおり、ウルドゥー語では、有気音は文字ھで表します。この文字は直前の文字を有気音化します。
硬口蓋有声摩擦音(palatal voiced fricative)
日本語の「ジャ」に近い音です。文字 ژ (ž)で表記される音です。ペルシア語からの外来語に用いられる音です。日本語の「ジャ」では舌が一度硬口蓋に付くのに対し、この音では付きません。英単語pleasureのsの音がこれに相当します。
軟口蓋摩擦音(velar fricative)
日本語の「カ」よりも喉の奥の方で発音される摩擦音です。慣れるまでは、خ (x) は、「ハ」、غ (ǧ) は「ガ」に近く聞こえます。うがいをするときに出る音に近いです。
軟口蓋無声閉鎖音(velar unvoiced stops)
日本語の「カ」よりも喉の奥のほうで発音される閉鎖音です。文字 ق (q)で表記される音です。慣れるまでは、「カ」に聞こえます。
母音 (vowels)
ウルドゥー語の母音は、長母音と短母音に区別できます。たとえば長母音「アー」に対して、短母音「ア」が区別されます。なお、ウルドゥー語では、母音eとoは、原則として常に長母音として発音されます。しかし、子音hの直前の短母音iは短母音eに、短母音uは短母音oに近く発音されます。
例)مہمان(mihmān)は、「メヘマーーン」 (mehmān)のように聞こえます。
عہدہ(`uhda) は、「オホダー」(`ohda)のように聞こえます。
またイザーファで示される-eも短母音として発音されます。
単母音と重母音の区別もあります。ウルドゥー語には2つの重母音aiとauがあります。
aiは、英単語catのaの音です。日本語の「ア」を発音する口の形で、「エ」を発音する要領です。「アイ」という発音でないので気をつけてください。実際の発音は、こちらで確認できます。
auは、英単語coatのoaの部分の音です。日本語の「ア」を発音する口の形で「オ」を発音する要領です。「アウ」という発音ではないので気をつけてください。実際の発音は、こちらで確認できます。
鼻音化母音は、母音を発音しながら、最後に鼻から空気を抜く感じで発音します。文字では ں を用います。ローマ字転写記号ではṇで表記しています。
ウルドゥー語の語彙は、長母音で終わるもの(開音節終わり)と子音で終わるもの(閉音節終わり)に分けることができます。日本語の語彙は原則として開音節で終わるため、日本語を母語とするものがウルドゥー語を発音すると、閉音節で終わる語彙の語尾にも短い母音が入ることがよくあります。