È̩KÓ̩ KÌÍNÍ 第1課 「挨拶」

では、さっそく始めましょう。
この課では、 「挨拶」「主語人称代名詞」「複数形の敬称的用法」「母音の連続が引き起こす音変化」 について学びます。

▼コラム「礼儀正しいヨルバ人」

■ スキット

このフラッシュの使い方

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朝です。コラ(少年)が父親に挨拶をします。そして、家を出たところで友人のクンレに会い、挨拶を交わします。

1 Kó̩lá (【2複主】) káàárò̩ (< (挨拶を受ける) àárò̩()) o(【間投】), bàbá(父親). コラ お早うございます、お父さん。
2 Bàbá Káàárò̩ (< (挨拶を受ける) àárò̩()), Kó̩lá(【人名】). S̩é(【疑問辞】) dáadáa(良い) lají (< ni(【コピュラ】) o(【2単主】) (起きる))? 父親 お早う、コラ。目覚めはいいかい?
3 Kó̩lá A(【1複主】) dúpé̩(感謝する). コラ おかげさまで。

4 Kó̩lá Káàárò̩ (< (挨拶を受ける) àárò̩()) o(【間投】). コラ お早う。
5 Kúnlé Káàárò̩ (< (挨拶を受ける) àárò̩()). Báwo(どう) ni(【コピュラ】)? クンレ やあ、お早う。(調子は)どうだい?
6 Kó̩lá Dáadáa(良い) ni(【コピュラ】). コラ いいよ。
7 Kúnlé S̩é(【疑問】) àlàáfíà(健康) ni(【コピュラ】)? クンレ 体調はいいかい?
8 Kó̩lá Àlàáfíà(健康) ni(【コピュラ】). コラ いいよ。
9 Kúnlé Ilé() ń kó̩(いかが) o(【間投】)? クンレ お家のほうはどうだい?
10 Kó̩lá Ó(【三単主】) (存在する) o(【間投】). コラ みな元気だよ。
11 Kúnlé Ó(【三単主】) dàbò̩ (< di(なる) àbò̩(到着)) o(【間投】). クンレ じゃあね。
12 Kó̩lá Ó(【三単主】) dàbò̩ (< di(なる) àbò̩(到着)). コラ じゃあ。

■ 解説と文法

● 挨拶

では、一般的な挨拶表現から。 ヨルバ語では、日本語に似て、朝・昼・夕刻・夜の時間帯によってあいさつの言葉を変えます。 これに対する返答も、同じフレーズを使います。 ですから、Káàárò̩と挨拶をされたら、同じくÒo, káàárò̩と返せばいいわけです。


動詞kúは「挨拶を受ける」という意味の動詞です(直訳すると「挨拶を受けなさい」という意味になります)。 ヨルバ語では、このの後ろに名詞を置くことで、どんなものでも挨拶や声かけの素材になります。


これらの挨拶に対しては、òo、もしくはその後に相手の状況に応じた言葉を返します。 òoとは簡易な返答の言葉です。


時候の挨拶に続いて、相手の様子を尋ねる表現を続けるのが一般的です。 英語のHow are you?に相当する表現です。 返答はdáadáa niあるいはa dúpéのようにいいます。

  • S̩é(【疑問】) dáadáa(良い) ni(【コピュラ】)?「ご機嫌はいいですか?」
  • Dáadáa(良い) ni(【コピュラ】), a(【1複主】) dúpé̩(感謝する).「いいです」
  • S̩é(【疑問】) dáadáa(良い) lají (<ni(【コピュラ】) o(【2単主】) (起きる))?「気持ちよく目覚めましたか?=よく眠れましたか?」
  • A(【1複主】) dúpé̩(感謝する).「おかげさまで」

もうひとつ、スキットにも出てきますが、相手の様子を尋ねる一般的な挨拶として、s̩é àlàáfíà niというのがあります。 この場合も、同じようにàlàáfíà niと返します。 ただし、S̩é àlàáfíà ni?は、目上の人が目下の人にかける言葉です。 目下の人は応答の際に、敬意をこめて、(英語のsirから)や(英語のma'amから)をつけることがあります。

  • S̩é(【疑問】) àlàáfíà(健康) ni(【コピュラ】)?「健康ですか?=元気にしてるかい?」
  • A(【1複主】) dúpé̩(感謝する), àlàáfíà(健康) ni(【コピュラ】).「おかげさまで、健康です=元気です」
  • A(【1複主】) dúpé̩(感謝する), (sir).
  • A(【1複主】) dúpé̩(感謝する), (ma'am).

本人の健康を尋ねたら、続けて家族の健康を尋ねます。 このときńkó̩「~はどうですか」を用います。(このńkó̩は、離してń kó̩のように書くこともあります。)

  • Bàbá() ńkó̩ (いかが)?「お父様はお元気ですか?」
  • Ìyá() ńkó̩ (いかが)?「お母様はお元気ですか?」
  • Ìyàwó() ńkó̩ (いかが)?「奥さんはお元気ですか?」
  • Àwo̩n(~たち) o̩mo̩dé(子供) ń kó̩̩ (いかが)?「お子さんたちはお元気ですか?」
  • Ilé() ń kó̩ (いかが )?「ご家族はお元気ですか?」

これに対する返答は、ó wàないしはwó̩n wàです。 字義通りには「彼(ら)は存在する」という訳になりますが、意訳としてはこれも「元気です」というニュアンスです(「元気です」以外の返答はふつう用いません)。 尋ねられている人が単数および同世代や目下の人のことであればó wà、複数および目上の人のことであればwó̩n wàになります。

  • Ìyàwó() ńkó̩(いかが)?「奥さまはお元気ですか?」
  • Ó(【3単主】) (いる).「元気です」
  • Ilé() ńkó̩(いかが)?「ご家族はお元気ですか?」
  • Ó(【3単主】) (いる).「元気です」
  • Àwo̩n(~達) o̩mo̩(子供 ) ńkó̩(いかが)?「お子さんたちはお元気ですか?」
  • Wó̩n(【3複主】) (いる).「元気です」
  • Olùkó̩(先生) re̩ (【2単所】) ńkó̩ (いかが)?「あなたの先生はお元気ですか?」
  • Wó̩n(【3複主】) (いる).「お元気でいらっしゃいます」

別れの挨拶は、ó dàbò̩ (< di(なる) àbo̩(到着))をつかいます。

  • Ó ( 【3単主】 ) dàbò̩ (< di ( なる ) àbo̩ ( 到着 ) ).「さようなら」

● 主語人称代名詞

単数 複数
1人称 mo a
2人称 o
3人称 ó wó̩n

ヨルバ語の人称代名詞について学びましょう。まず主語代名詞から。 2人称単数と3人称単数は、声調の違いのみで使い分けられます(oó)。

  • Mo(【1単主】) ka(読む) ìwé().「私は本を読む」
  • A(【1複主】) ka(読む) ìwé().「私たちは本を読む」
  • O(【2単主】) fé̩(欲する) o̩kò̩(自動車).「あなたは車が欲しい」
  • (【2複主】) fé̩(欲する) o̩kò̩(自動車).「あなたたちは車が欲しい」
  • Ó(【3単主】) (見る) ejò().「あの人は蛇を見た」
  • Wó̩n(【3複主】) (見る) ejò().「あの人たちは蛇を見た

● 複数形の敬称的用法

  • (【2複主】) káàárò̩ (< (挨拶を受ける) àárò̩()) o(【間投】).

これは、日本語の「お早うございます」に相当します。 ところで、スキットの中では、息子のコラKó̩láが、父親bàbáに向かって挨拶をしていますね。 コラは冒頭にを付けていますが、父親のほうはを付けていません。 は2人称複数形の主語代名詞ですが、ヨルバ語では、相手が単数である場合でも、複数形を用いることで敬意を表すことができます。

同じことは3人称の場合にもあてはまります。 つまり、wó̩nは「あの人たち」という複数形であると同時に、1人の人物に対して「あの方」という敬語的意味を担って用いることができるのです。 むろん、敬意を表す相手が複数いる場合(「あの方々」)でもwó̩nです。

  • O(【2単主】) mò̩(知る).「君は知っている」
  • (【2複主】) mò̩(知る).「あなたはご存知である」
  • Ó(【3単主】) mò̩(知る).「あの人は知っている」
  • Wó̩n(【3複主】) mò̩(知る).「あの方はご存知である」

● 母音の連続が引き起こす音変化

母音の連続が引き起こす音変化に注意しましょう。ヨルバ語では、連続する母音が融合して変化する場合が多くあります。次の例を見てください。

  • káàárò̩ (< (挨拶を受ける) àárò̩())「朝の挨拶を受けなさい → お早う」
  • káàsán (< (挨拶を受ける) òsán())「昼の挨拶を受けなさい → こんにちは」
  • káalé̩ (< (挨拶を受ける) alé̩(夕方))「夕の挨拶を受けなさい → こんばんは」

ここで、時間帯を表す名詞は、いずれも母音で始まっていますね。 このように母音で始まる語が続くとき、動詞の母音uは、後続する名詞の最初の母音a/o/aと一体化し、母音がaに変化しています(同時に声調も変化が生じますが、今のところは表記/音声の通りにおぼえてください)。

同様の音変化はヨルバ語においては頻繁に生じます(ただし、母音が連続しても音変化が生じずにそのまま現れることもあります)。 中には非常に複雑な説明を要するものもあり、音変化を説明していると大変な分量になってしまいます。 このレッスンでは、語が連続・融合して変化が生じる場合には、次のように変化する前の形をカッコ内に表記しています。

káàárò̩ (< (挨拶を受ける) àárò̩())


コラム「礼儀正しいヨルバ人」

オラゴケ・アラム(O̩lágòkè Àlàmú)、神谷俊郎(Toshiro Kamiya)

他の多くのアフリカ社会でも同様ですが、アフリカ人は、挨拶に時間をかけます。

ヨルバ社会においても、挨拶は重要な要素です。 たとえば子供たちが起床すると、まず両親におはようの挨拶をします。 妻は夫に対して挨拶をします。 子供たちは、尊敬のしるしとして、男の子であれば平伏し、女の子であればひざまずいて挨拶をします(挨拶を受ける人のほうは、特に何もしません)。

男の子の挨拶 女の子の挨拶

とはいえ、最近ではこうした形式の挨拶もする機会が少なくなってきているようです。 親子間でよほどかしこまった場合か、王様に謁見する際に儀礼的に行われることはありますが、日常的に行っている人はまれでしょう。

こうした儀礼的動作を簡略化したものが使われることがあります。

ただし、いずれにせよこうした挨拶の動作はあくまでヨルバ人の風習なのであって、日本人や外国人がやる必要はありません(やると面白がってくれるかもしれませんが)。 ふつうは握手で事足ります。