「君は今年いくつですか?」ベトナム人と話をしていると、会話の初期の段階で必ずといっていいほど、年齢を聞かれます。これはなぜでしょう。
ベトナム語には、自分や相手を指す言葉、呼称詞が豊富にあります。会話の中で用いるべき呼称詞は、年齢、性別、身分、親しさなどの要素により決まります。相手をどう呼び、自分をどう称するのが適切か判断するために、まずは相手の年齢を尋ねることが必要なのです。
ここでは、その呼称詞の一部を紹介します。
自分より年上の男性を呼ぶときは、anhを使います。anhは「兄」という意味です。自分より年上の女性を呼ぶときには、chịを用います。chịは「姉」という意味です。このとき、自分のことを指す呼称詞はem「弟、妹」になります。では逆に自分が年上で、年下の相手と話すときはどうでしょう。自分のことを指す呼称詞は男性であればanh、女性であればchịになり、相手を指す呼称詞はemになります。このようにanh, chị/ emは相手との年齢差により、「わたし」にも「あなた」にもなるのです。
ベトナム語の挨拶「こんにちは」は"A chào B"で、Aには「わたし」、Bには「あなた」が入ります。chàoは「挨拶をする」という動詞です。今、Namさん(20歳男性)とThuさん(23歳女性)が出会ったとしましょう。この二人が挨拶を交わすときにはどうなるでしょうか。
| Namさん→Thuさん | Em chào chị. | わたし(弟)はあなた(お姉さん)に挨拶します |
| Thuさん→Namさん | (Chị) chào em. | (わたし(お姉さん)は)あなた(弟)に挨拶します |
実際の会話の中では、年齢が上の人から年齢が下の人へ挨拶するときは、「わたし」を言わないことが多くあります。
次は自分の両親、または子供と同年代の相手と会話をする場合です。自分の両親より少し年上の相手と話すときは、相手の性別にかかわらずbác「おじ、おば」と呼び、自分のことはcháu「甥、姪」と言います。自分の両親より少し年下の相手と話すときは、男性であればchú「おじ」、女性であればcô「おば」と呼びます。このときも自分のことはcháuと言います。
最後は、先生と学生/生徒という間柄で用いられる呼称詞です。男性の先生はthầy、女性の先生はcôと呼びます。先生と話すときは、自分のことはemと指します。逆に先生は、自分のことをthầy、côと言ったりtôi「中性的な'わたし'」と言ったりし、学生/生徒のことはemと呼びます。
★敬称「~さん」としての呼称詞
さらに、この呼称詞は敬称としても用いることができ、「~さん」は"呼称詞+名前"で表されます。年上の相手の名前を呼ぶときには必ずこの呼称詞をつけなければなりませんが、年下の相手を呼ぶときには省略されることが多くあります。
| Namさん(自分と同年代で年上の男性) | anh Nam |
| Thuさん(自分の両親よりも少し年上の女性) | bác Thu |
| Vân先生(女性の先生) | cô Vân |
★呼称詞を使ったあいさつ表現
これらの呼称詞は、文の中だけでなく、日常的に用いる挨拶表現の中にもたくさん現れます。誰が誰に挨拶しているのかを意識しながら、挨拶表現を覚えましょう。
A chào B:こんにちは/さようなら
| Em chào anh. | |
| Cháu chào bác. | |
| (Thầy) chào em. |
A cảm ơn B:ありがとう
※実際の会話ではA cám ơn Bと発音されることも多い
| (Anh) cảm ơn em. | |
| (Anh) cám ơn em. | |
| Cháu cảm ơn chú. | |
| Cháu cám ơn chú. | |
| Em cảm ơn thầy. | |
| Em cám ơn thầy. |
A xin lỗi B:ごめんなさい
| (Anh) xin lỗi em. | |
| Cháu xin lỗi cô. | |
| Em xin lỗi cô. |
Chúc A ngủ ngon:おやすみなさい
| Chúc anh ngủ ngon. | |
| Chúc bác ngủ ngon. | |
| Chúc thầy ngủ ngon. |
A có khỏe không?:お元気ですか?
| Em có khỏe không? | |
| Cô có khỏe không? | |
| Bác có khỏe không? |
A khỏe:元気です
| Em khỏe. | |
| Anh khỏe. | |
| Bác khỏe. |