最初のスキットの動画では、同じくらいの年齢の学生同士で、しかも一方は外国人(日本人留学生)なので、挨拶の時に握手をしていました。しかしながら、実際には、特に伝統的な文脈では、自己紹介をする相手の年齢、性別、身分、宗教、地域などによって、挨拶の仕方は変わります。例えば、男女間での挨拶の場合、手に触れることをためらう人(特にイスラム教徒)もいます。様々なスタイルがある中で比較的一般的なものは、互いの手を触れる程度の握手をし、その手をそのまま自分の胸に戻すというものです(動画1参照)。
イスラム教徒の場合、両手の手のひらを合わせ、相手も両手を合わせたら、互いの手の先を軽く合わせ、お辞儀をするようにして、互いが自分の手をそのまま顔の方に戻します(動画2参照)。
どちらの場合も、手が触れた時に、自分の名前だけを伝えます。例えば、 "Yuki"とだけ言います。それは、簡単な自己紹介を兼ねています。これを聞き逃すと、相手の名前がわからなくなりますので、気をつけましょう。
この他には、親しい女性同士が久々に会った時に、挨拶として互いの頬を合わせることがよくあります(動画3参照)。
なお、日本語の「よろしくお願いします」にあたるインドネシア語はありません。また「表現のポイント」で紹介した"Saya senang berkenalan dengan Anda"「知り合えてうれしいです」は、比較的フォーマルな場面でしか使われません。
動画1 典型的な挨拶
動画2 イスラム教徒の挨拶
動画3 親しい間柄の女性同士の挨拶
インドネシアは、民族によって命名の仕方が異なり、また、姓を持たない民族が多いため、姓があったとしても、いわゆるファースト・ネームを呼び名として使う場合がほとんどです。最初に知り合った時、その呼び名を相手に伝えます。身分証明書(KTP)などに書かれている名前は、そうした呼び名よりも非常に長く複雑である場合がありますし、呼び名とまったく異なることもあります。長い間つきあっていても、正式な名前は知らなかったということは多々あります。
インドネシア人は姓で呼ぶ習慣があまりないため、外国人も姓ではなく、名前の方で呼びます。姓の方で呼んでほしい人は、先にそのことを伝えておく必要があります。例えば、"Tolong panggil saya ~"「私を~と呼んでください」などと教えておくとよいでしょう。
インドネシアでは、まだよく知らない相手に対して、家族について質問をすることが多いです。親・兄弟姉妹などの家族構成、その家族が今、どこで何をしているかなど、細かい質問をされます。インドネシアでは当たり前の光景ですので、初対面でも失礼だとは思わないでください。年齢については、一応女性に対して尋ねるのはあまり適当ではないと思っているようです。また、「何歳ですか」ではなく、「何年生まれですか」(Lahir tahun berapa?)と聞かれることが多いです。
インドネシアの首都、ジャカルタは、パジャジャラン王国時代(7世紀末〜16世紀中葉)はスンダ・クラパ、バンテン王国統治下に入る16世紀末はジャヤカルタと呼ばれていた港町でした。17世紀初めに香辛料貿易のために、東南アジア島嶼部に訪れたオランダ人が、1619年にこの地に要塞を築き、バタヴィアと改名しました。その後バタヴィアはオランダ領東インドの首都として発展を続け、1942年、日本占領期に、都市名が現在のジャカルタとなりました。
スキットに出てくる「モナス」(独立記念塔)は、ジャカルタ中心部に位置するムルデカ広場(Lapangan Médan Merdéka)にそびえたつ記念塔です。インドネシアの独立のシンボルとして、初代スカルノ大統領により発案され、1975年に完成しました。高さは132メートルで、塔の台座部分には、独立広間があり、スカルノ大統領が読み上げた独立宣言文が展示されています。その階下には、歴史博物館があり、石器時代からスハルト体制期までのインドネシアの歴史を説明するジオラマが展示されています。塔の内部には、エレベーターが設置され、展望台に上ることができます。ムルデカ広場は現在、ジャカルタ市民の憩いの場となっており、休日には多くの人で賑わいます。