第10課 パーティの前後

●文法解説

2. 語順6

 これまで完結文の語順,そして従位節内の語順について学びましたが,ここでは完結文の基本語順から外れる場合について,説明します.まず,次の例文を見てみましょう.

 

 I Japan spiser man det ikke råt. 日本ではそれを生では食べません.

 

 この文は完結文ですので,完結文の語順にあてはめてみましょう.

 


前域中域後域
定形動詞主語中域副詞不定形動詞その他の要素
I Japanspisermandetikkeråt.

 

 これまでに習った完結文の語順では,中域には「定形動詞」,「主語」そして「中域副詞」が置かれるということでした.しかしながら,上の例からも分かるように,中域内で,「主語」と「中域副詞」の間にdetという,本来であれば後域に置かれる「目的語」が置かれています.これは何故でしょうか?

 

 ここで,上の例文のdetをkinakålに変えた場合の語順について見てみましょう.

 

 I Japan spiser man ikke kinakål rå. 日本では白菜を生では食べません.

 


前域中域後域
定形動詞主語中域副詞不定形動詞その他の要素
I Japanspisermanikkekinakål rå.

 

 この場合は中域には「定形動詞」,「主語」そして「中域副詞」が置かれていて,「目的語」のkinakålは後域に置かれています.

 つまり,「目的語」がkinakålである場合と,detである場合とで語順が異なるということです.

 kinakålとdetの違いは,kinakålが名詞であるのに対して,detが人称代名詞であるということです.デンマーク語では,名詞には原則として常に強勢が置かれます.これに対して,人称代名詞は「対比」などの特別な意味の場合には強勢が置かれますが,原則として強勢は置かれません.まず目的語がkinakålである例文を確認しましょう.

 

 I Japan spiser man ikke kinakål rå.

 

この場合は,目的語のkinakålに強勢が置かれているので,通常の完結文の語順となっています.それでは目的語がdetである例文を確認しましょう.

 

 I Japan spiser man det ikke råt.

 

この場合は,目的語detが人称代名詞で,なおかつ強勢が置かれていないために(=弱強勢目的語),リズムの関係で,中域副詞の直前に移動したものと解釈されます.ここでもう1度,最初の例文I Japan spiser man det ikke råt. の語順を見てみましょう.

 


前域中域後域
定形動詞主語弱目的語中域副詞不定形動詞その他の要素
I Japanspisermandetikkeråt.

 

 

 以下に,これまでの課別学習で,このような弱強勢目的語の移動を含んだ語順を持つ例文をまとめてあるので,弱強勢目的語を含む語順について確認してください.

 


前域中域後域
定形動詞主語弱目的語中域副詞不定形動詞その他の要素
Hvorharduden?
Jeg har deni tasken.
Ladoskommeaf sted!
Ladosforbi Amalienborg!
Ladoslavefrikadeller og gulerodssalat!
Ladosskyndeos hjem at lave mad!
Desudenlæggersneensigheller ikke så tit.
Jegglædermigtil at møde din familie.
Lad osgøredet!
Lad osfortsættetil Helsingør!

 

 

注意!

 この「弱強勢目的語の移動」は,文が定形動詞(現在形,過去形,命令形)のみを含む場合に適用されます.したがって次の例文のように,文が定形動詞と不定形動詞を含む場合には適用されません.

 

Har du nogensinde mødt ham? これまでに彼に会ったことがありますか?

 

 この例文でも,人称代名詞hamは強勢の置かれない(弱強勢の)目的語ですが,中域副詞 (nogensinde) の直前に移動することはありません.