第7課  リーヴァの家族

●文法解説

2. 現在完了:動詞の過去分詞形

 デンマーク語でも,英語同様に,〔har + 動詞の過去分詞〕で現在完了形を作ることができます.また,英語と同様に現在完了形を用いて,「継続」・「経験」・「完了」などを表すことができます.

 

Vi har været i Danmark tre gange.  私たちはデンマークに3回行ったことがあります.

 

Henrik har boet i Japan i 2 år.  ヘンレクは日本に2年間住んでいました.

[Henrik:男子名]

[bo (-ede, -et):住む]

Har du nogensinde mødt ham?  これまでに彼に会ったことがありますか?

Bente har aldrig spist rå rejer.  ベンデはこれまでに一度も生のえびを食べたことがありません.

[Bente:女子名]

[aldrig:決して~ない,一度も~ない]

[reje (-n, -r):エビ]

 

 まずは,過去分詞形の作り方を学びましょう.

 

 まずはこれまでに習った不規則変化動詞の過去分詞形を確認しましょう.

 

― 不規則変化動詞の例 ―

不定詞形現在形過去形過去分詞形意味
betydebetyderbetødbetydet ~を意味する
blivebliverblevblevet ~になる
gøregørgjordegjort する
gårgikgået 歩く;行く
haveharhavdehaft 持っている
heddehedderhedheddet ~という名前である
hjælpehjælperhjalphjulpet 助ける;手伝う
holde holder holdt holdt (パーティーなどを)開く;保持する
kommekommerkomkommet 来る,到達する
ladeladerlodladet ~させる
lydelyderlødlydt 響く,音がする
læggelæggerlagdelagt 横たえる,横にする
riveriverrevrevet 掻く
seserset 見える;見る
siddesiddersadsiddet 座っている
sigesigersagdesagt 言う
væreervarværet ~である;~がある,~がいる

 

 

 次に第1規則変化動詞そして第2規則変化動詞の過去分詞形を確認しましょう.

 

― 第1規則変化動詞の例 ―

不定詞形現在形過去形過去分詞形意味
arbejde arbejder arbejdede arbejdet 働く
blandeblanderblandede blandet 混ぜる
flytteflytterflyttedeflyttet 引越しをする
glæde glæder glædede glædet 喜ばせる
kostekosterkostede kostet ~という値段である
lavelaverlavede lavet 作る;する
lege leger legede leget 遊ぶ
snesnersneedesneet 雪が降る
stavestaverstavede stavet 綴る
studere studerer studerede studeret 学ぶ

 

➢ 第1規則変化動詞における過去分詞形の変化語尾は,-et です.

➢ この -et という語尾のtは, のように柔らかい音で発音されます.

 

― 第2規則変化動詞の例 ―

不定詞形現在形過去形過去分詞形意味
begynde begynder begyndte begyndt 始める;始まる
købe køber købte købt 買う
læse læser læste læst 読む;学ぶ
møde møder mødte mødt 会う
rejserejserrejsterejst 旅をする
skyndeskynderskyndteskyndt 急がせる
smagesmagersmagtesmagt 味がする
spisespiserspistespist 食べる
undervise underviser underviste undervist 教える

 

➢ 第2規則変化における過去分詞形の変化語尾は,-t です.

 

注意!

 第6課までに習った動詞の「不定詞形」,「現在形」そして「過去形」の発音に関しては,第6課の「文法解説」を参考するようにしてください.



 

 

― 完了の助動詞について ―

 

 第7課のスキットでは,〔完了の助動詞(現在形) + 動詞の過去分詞〕で現在完了を表している文が2つありました.

 

Har du nogensinde mødt ham? これまでに彼に会ったことがありますか?

Min søster er lige begyndt at arbejde som sygeplejerske. 私の姉は看護師として働き始めたばかりです.

 

 最初の例文では,英語同様,完了の助動詞がharです.しかし2番目の例文ではer begyndtとなっていて,完了の助動詞として英語のbe動詞に相当するerが用いられています.

 つまり,デンマーク語の完了の助動詞には,haveとværeの2種類があり,現在完了を表す場合は,それぞれの現在形harとerが,そして過去完了を表す場合は,それぞれの過去形havdeとvarが使われることになります.

 

 

― 完了の助動詞 have とvære の使い分け ―

 では,この2つの助動詞をどのように使い分けるかということを理解するためには,まずデンマーク語の動詞が,表される意味内容によって3種類のカテゴリーに分けられることを知らなければなりません.

 

 デンマーク語の動詞は,

 (1) 「状態動詞」(状態が継続することを表す動詞)

 (2) 「非状態動詞」(上記以外を表す動詞)

 

の2つのカテゴリーに分けられます.

 

 次に (2)「非状態動詞」は,

 

 (2a) 「動作動詞」(時間的幅を持って行なわれる動作を表す動詞)

 (2b) 「変化動詞(推移動詞)」 (その行為が瞬間的に完了してしまうことを表す動詞)

 

というさらに2つのカテゴリーに分けられます.

 これらの3つのカテゴリー((1), (2a), (2b))の動詞について,以下の例で確認しましょう.

 3つのカテゴリー全てに,それぞれ自動詞(目的語を必要としない動詞)と他動詞(目的語を必要とする動詞)が存在します.

 

(1) 状態動詞

自動詞:være <~である;存在する>,bo <住んでいる>,ligge <横たわっている>,mangle <欠けている>

他動詞:have <持っている>,eje <所有している>,forstå <分かっている>,vide <知っている>,ligne <似ている>

 

(2) 非状態動詞

(2a) 動作動詞

自動詞:arbejde <仕事をする>,spekulere <考える>,protestere <抗議する>,spadsere <散歩する>

他動詞:diskutere <議論する>,snitte <刻む>,slå <叩く>,pleje <看護する>,vejlede <指導する>


(2b) 変化動詞(推移動詞)

自動詞:blive <~になる>,komme <来る>,dø <死ぬ>,forsvinde <消失する>,falde <落ちる>

他動詞:drikke <飲む>,dræbe <殺す>,knuse <砕く>,vælte <倒す>

 

 上記のことを踏まえて,haveとværeの使い分けについて見ていきましょう.

 

 

― 完了の助動詞にhaveが使われる場合 ―

 対象となる動詞が,上記の3つのカテゴリーのどれに属していようとも,その動詞が他動詞である場合には,完了の助動詞はhaveとなります.

Jeg har haft mange gode venner i mit liv.

私は自分の人生で多くの良い友人に恵まれてきた.

[liv (-et, -):人生]

Henrik har vejledet mange studerende i årenes løb.

ヘンレクは長年にわたって多くの学生を指導してきた.

[løb (-et, -):流れ]

Ole har allerede spist kagen.

オーレはもう既にケーキを食べました.

[allerede:既に]

[kage (-n, -r):ケーキ]

 

 また,more sig <楽しむ> などの再帰動詞は,その意味を日本語で考えると一見自動詞かと思ってしまいがちですが,デンマーク語としてはあくまでも主語の人が自分自身を楽しませる,という他動詞の構造になっているので,再帰動詞の完了の助動詞はhaveとなります.

 

Vi har hygget os rigtig meget.  私たちはとてもよく楽しんだ.

Han har ikke forandret sig, siden han var lille.

彼は,幼いころから,変わっていない.

[forandre (-ede, -et):変える,forandre sig:変わる]

[siden:~以来]

Pia har glædet sig til at rejse til Japan.

ピーアは日本に旅行に行くのを楽しみにしてきた.

[Pia:女子名]

 

 対象となる動詞が,自動詞で,なおかつ状態動詞である場合にも,完了の助動詞はhaveとなります.

 

Det har været varmt i dag.  今日は暑かった.

Jeg har boet i Danmark i to år.  私はデンマークに2年間住んでいます.

 

 さらに,対象となる動詞が,自動詞で,なおかつ動作動詞である場合にも,完了の助動詞はhaveとなります.

 

Jeg har arbejdet i otte timer.  私は8時間働いています.

Jeg har spadseret i parken.  私は公園を散歩しました.

[park (-en, -er):公園]

 

 

― 完了の助動詞にværeが使われる場合 ―

 これまでに確認したことからも分かるように,完了の助動詞としてværeが使われるのは,対象となる動詞が,自動詞で,なおかつ変化動詞(推移動詞)の場合だけです.

 

Han er blevet stor.  彼は大きくなりました.

Gæsterne er kommet.  お客さんたちは到着しました.

[gæst (-en, -er):客]

Hans far er død.  彼の父親は亡くなりました.

Pigen er forsvundet.  その女の子は消えました(=いなくなりました).

 

 

― 移動を表す動詞 ―

 gåやløbeなどの移動を表す動詞は,動作を表す「動作動詞」として用いられる場合と,主語に起こった変化を表す「変化動詞」として用いられる場合があります.次の例文を見てみましょう.

 

Jeg har gået i to timer.  私は2時間歩いています/歩きました.

Jeg har løbet i en time.  私は1時間走っています/走りました.

[løbe (løb , løbet ):走る]

 

 これら2つの例文では,gåもløbeもそれぞれ「歩く」そして「走る」という動作を表している(「動作動詞」である)ので,完了の助動詞はhaveを用います.それでは次の例文を見てみましょう.

 

Han er gået.  彼は行きました(もういません).

Hunden er løbet væk.  犬は逃げていきました(もういません).

[hund (-en, -e):犬]

 

 この2つの例文では,gåとløbeは「歩く」や「走る」などの動作を表しているのではなくて,主語である対象がある地点からある地点へと移動したことを表しているので,gåそしてløbeはここでは「変化動詞(推移動詞)」となります.したがって,完了の助動詞もhaveではなくて,væreとなります.

 

注意!

 デンマーク語の現在完了形は,これまでの例文からも分かるように,英語と同様に「継続」・「経験」・「完了」などを表すことができます.

 しかし,英語とは大きく異なる点として,デンマーク語では過去形は「その文あるいはその前の文脈の中に,過去の一時点を表す副詞的語句が示されているか,あるいは状況から過去の一時点を特定できる場合」のみに使われます.

 

I morges skinnede solen jo så dejligt.

今朝は陽がとても気持ちよく照っていましたよね.

Vi legede tit sammen, da vi var børn.

私たちが子どもだった頃,私たちはよく一緒に遊びました.

 

 スキット内でも使われている上記の2文は,それぞれ文中にi morges <今朝> や da vi var børn <私たちが子どもだった頃> などのように「過去の一時点を表す」副詞的語句があるので,skinnedeやlegedeのように動詞の過去形が使われています.

 したがって,上記の2例のように「過去の一時点」が副詞的語句や文脈などで明らかな場合は,デンマーク語では「過去形」が使われますが,「過去の一時点」が副詞的語句や文脈などによって示されない場合には,過去を表す場合であっても,デンマーク語では「現在完了形」が使われます.そのため,「現在完了形」の使用は英語に比べて非常に多いと言えるでしょう.