第7課  リーヴァの家族

●文法解説

 ここでは,第7課で使われた表現に関連のある文法事項について説明します.

 

1. 形容詞の比較変化

 これまでに形容詞の未知形変化,既知形変化について学びましたが,ここでは形容詞の比較変化について学びましょう.

 比較変化とは,形容詞の程度の差を表すための語形変化,つまり原級・比較級・最上級を表す語形変化のことです.

 

 まずは,規則的な比較変化をする形容詞を見ていきましょう.

 

原級 意味比較級最上級
bred 幅の広いbredere bredest
høj 高いhøjere højest
lav 低いlavere lavest
lækker 美味しいlækrere 注意!lækrest 注意!
rød 赤いrødere rødest
smuk 美しいsmukkere smukkest
varm 熱い,暑い;暖かいvarmere varmest

 

➢ このグループでは,比較級の語尾は -ere,最上級の語尾は -estとなります.

➢ 1音節語は原則として規則的な比較変化をします.

注意!

 lækker は2音節からなる語です.また,強勢は第1音節 læ- にあります.そして第2音節である -kker には強勢がありません.

 この強勢のない音節では,母音字eは非常に弱く発音されます.そのために,lækkerにさらに語尾が続く場合は,この第2音節にあるeが省略されます.

 また,この強勢の置かれないeの直前に,lækkerのように子音字が重複している ( -kk- ) 場合は,語尾が付くとeとともにそれらの子音字の1つが省略されます.

 

lækker + -ere → lækkerere → lækrere

lækker + -est → lækkerest → lækrest

 

 次に語尾が -ig, -lig, -som に終わる形容詞を見てみましょう.

 

原 級意 味比 較 級最 上 級
fugtig 湿った,湿度の高いfugtigere fugtigst
kølig 涼しいkøligere køligst
rigtig 正しいrigtigere rigtigst
følsom 感じやすいfølsommere følsomst
langsom (スピードが)遅いlangsommere langsomst
morsom おもしろいmorsommere morsomst

 

➢ このグループでは,比較級の語尾は -ere,最上級の語尾は -stとなります.

 

 次に,不規則な比較変化をする形容詞について見ていきましょう.

 

原級意味比較級最上級
stor 大きいstørre størst
ung 若いyngre yngst
lang 長いlængere længst
少しのfærre færrest

 

➢ これらの形容詞は,比較級・最上級で現れる母音が,原級で現れる母音とは異なります.

 

原級意味比較級最上級
gammel 古い;年老いたældre ældst
god 良いbedre bedst
lille 小さいmindre mindst
mange 多数のflere flest
meget たくさんのmere mest
ond 悪いværre værst

 

➢ これらの形容詞は,比較級・最上級が原級とは,全くと言っていいほど異なる形態をしています.

 

 このように不規則な比較変化をする形容詞は,語形変化を覚えるのが大変ですが,頻繁に用いられる形容詞ですので,頑張って覚えましょう.

 

 これまでに見た形容詞はどれも,語形を変化させて比較級・最上級を表していのに対して,外来語,多音節語,過去分詞からできた形容詞,名詞からできた形容詞,合成語などは,(英語のmore, mostに相当する)mere, mestを用いて比較変化を表します.

 

原級比較級最上級意味成り立ち(由来)
økonomisk mere økonomisk mest økonomisk 経済的な外来語
almindelig mere almindelig mest almindelig 一般的な多音節語
uventet mere uventet mest uventet 予期しない過去分詞
skyet mere skyet mest skyet 曇りの名詞
tilfreds mere tilfreds mest tilfreds 満足した 前置詞til+名詞
iskold mere iskold mest iskold 氷のように冷たいis <氷>+kold <冷たい>

 

注意1

Jeg var mere tørstig end sulten.

私はお腹がすいたというよりは,喉が渇いていた.

[tørstig (-t, -e): 喉が渇いた]

[sulten (-t, sultne): 空腹の]

 

 このように,異なる性質を表す形容詞を比べる際には,tørstigのように語形変化が可能な形容詞で合っても,mereを用いることが必要となります.

 

注意2

 尚,先ほど-ig, -lig, -somに終わる形容詞は,語形変化によって比較級,最上級を表すと述べましたが,最近では,語形変化を伴わずに,mere, mestを用いて表すことを好む人もいるようです.