デンマーク語の子音は,日本語と比べて,その数が母音のように特に多いわけではありません.しかし,以下の説明にあるようにいくつか特徴的な発音があります.
デンマーク語の子音表に挙げられている各子音に付けられている V をクリックすると,当該子音を含む単語が3つ発音されます.
発音する口の動き方を確認しながら,皆さんも発音してみましょう.
発音されている単語一覧表はこちら pdf
・ だけでなく,
もどちらも無声音であることに注意してください.両者の違いは,英語や日本語のように「有声/無声」にあるのではなく,
が強い気息を伴う,いわゆる帯気音であるのに対し,
はそのような気息は伴わないという点にあります.つまり,日本語の「バ,ダ,ガ」をそのままデンマーク語の
に対応させて発音すると,それはデンマーク語音には聞こえにくいことになります.このデンマーク語の
の正確な発音をマスターすることは難しいですが,
を発音する際に日本語の「パ,タ,カ」の子音をなるべく弱く発音するとよいでしょう.
・ そして
は英語やドイツ語などで対応する音だと考えてください.
・ は「シャ,シュ,ショ」の子音と似た音です.
・ は「ヤ,ユ,ヨ」の子音と同じだと考えてください.
・ はパリなどのフランス語のr音とほぼ同じです.
・ は英語のthe, thatなどのthの子音に似ていますが,舌を歯の間に挟むのではなく,(上の)歯茎に軽く触れされるようにして発音します.
・ は母音に近い音です.
は二重母音
「アイ」や
「オイ」の「イ」の部分に相当する音です。
は 母音
をあまり口を緊張させず,短く発音したものと考えてください.
は 母音
や
をあまり口を緊張させずに発音したものと考えてください.
は例えばfirma「会社」
「フィアマ」のように短い「ア」のように聞こえる音です。母音
や
を短く発音したものと考えてください.
デンマーク語には子音の一種とも考えられる声門せばめ音があります.これは声門をせばめ,息を出すのを一瞬おくらせるようにした結果できる音です.これはデンマーク語ではstød 「突き音」と呼ばれ,長母音の後,
例 :
または短母音後の の後にしか現われません.
例 :
このstødの有無で意味が変わってくるので,重要な要素と言えます.例えば,læser という単語は,stødを伴わずに
と発音すると「読者」という意味を表すのに対してstødを伴って
と発音すると「読む」という意味の動詞 læse の現在形を表します.
stødはこのように確かに重要な要素ではありますが,stødの有無に関する複雑な規則を,外国人は音声学者でもないかぎり,マスターすることは不可能です.いいえ,外国人だけではありません,デンマーク人自身も出身地によってはstødのない方言を話す人や,標準語とは違ったところにstødが現われる方言を話す人もいますので,そういったデンマーク人にとっても標準語のstødをマスターすることは困難なことであると言えます.
したがって,外国人である私たちはstødというものが存在することは十分認識しておく必要はあるものの,こだわっていてはデンマーク語が上達できないでしょうから,それほどまでにこだわる必要はないだろうと思われます.日本語でもstødとは異なる現象ではありますが,高低アクセントによって単語の意味を区別しています.例えば,"箸"は東京周辺では(高い・低い)( ̄_)のアクセントであるのに対し,"橋"は(低い・高い)(_ ̄)のアクセントですが,大阪周辺ではその逆で,"箸"(_ ̄),"橋"( ̄_)です.大阪大学外国語学部の学生食堂で東京出身の学生が"箸"を取ってくれるように頼むときに, "は"を高く,"し"を低く( ̄_)と言ったとすると関西出身の学生には"橋"を取ってくれと言われたと聞こえるのですが,その関西出身の学生はちゃんと"箸"を取ってくれるはずです.同様に,私たち日本人がデンマーク語で「それらの町には」という文脈において,「それらの町」に対応する語 byerne を発音しようとしたとします.byerneは,本来ならstødを伴って,
と発音されますが,これを
とstød無しで言ったとしても,誰もその文脈では,このstød無しの発音
が意味するところの"にわか雨"bygerneの話をしているとは思わないで,byerne
「それらの町」のことを言っているだろうと理解してくれるにちがいありません.